- 補聴器は安価なものではありません。補聴器を購入する場合には、できるだけご家族と相談の上、購入を検討してください。可能であれば、ご家族と一緒に補聴器外来を受診して説明をお聞きください。
- 最終的な購入は、補聴器販売店から購入していただきますが、当院が補聴器メーカー、販売店から何らかの報酬を受けることは一切ありません。補聴器外来では正当な保険診療に基づく診療・検査費のみをいただきます。
- 補聴器外来は完全予約制のため、まずは一般外来を受診してください。
補聴器外来
補聴器外来

補聴器は単純に音を大きくするだけではありません。高性能かつ非常に小さなマイク、スピーカー、ICチップを搭載し、情報を瞬時に処理して以下のことをしています。
近年、難聴を放置することが、認知症のリスクになり、かつその影響力がとても大きいことが、科学的に証明されました。また聴こえが悪いと、コミュニケーションがとりにくくなり、社会性をもって元気に長く暮らすことが難しくなります。
日本は超高齢化社会になり、補聴器の必要性が高いはずなのに、海外に比べて使用率がとても低いこともわかりました。人生100年時代を豊かに生きるために、今、補聴器に対する認識の変化が求められています。
当院でもその責務を感じ、2026年2月から補聴器専門外来を開始しました。検査室を改変し、補聴器調整に必要な音場検査装置、補聴器特性試験装置を設置しました。
補聴器外来を担当する医師は、耳鼻咽喉科専門医を取得して20年以上の臨床経験をもち、かつ日本耳鼻咽喉科学会から委嘱された「補聴器相談医」と、厚生労働省が主催している「補聴器適合判定医師研修会」の修了証を有しています。
補聴器診療は、医師だけで行うことができず、補聴器販売店との協力が不可欠です。当院では、先述の担当医師が、認定補聴器販売店*1の認定補聴器技能者*2と一緒に補聴器診療にあたり、医療面だけではなく、機器の面からも最大限の効果を発揮するように調整していきます。
*1認定補聴器専門店
公益財団法人テクノエイド協会*3が定めた基準(技能者在籍、適切な設備、相談医との連携)を満たし、補聴器の適正な販売を行う店舗のこと。専門資格「認定補聴器技能者」が常勤し、聴力測定や調整、アフターケア体制が整った信頼の目安となる。
*2認定補聴器技能者
公益財団法人テクノエイド協会*3が認定する、補聴器の調整(フィッティング)や相談・販売を行う専門家資格。4年間の養成課程講習受講と試験合格が必須で、5年ごとの更新講習も義務付けられている。耳鼻咽喉科の「補聴器相談医」と連携し、専門知識に基づいて補聴器を提供する。
*3公益財団法人テクノエイド協会
福祉用具や介護ロボットの調査・開発・普及を担う、高齢者や障害者の自立支援を目的とした専門機関。TAIS(福祉用具情報システム)の運営や、義肢装具士の国家試験事務、認定補聴器技能者の養成などを通じて、安全で効果的な用具の普及に寄与している。公益財団法人テクノエイド協会と日本耳鼻咽喉科学会は、補聴器の適正普及と安全な使用を目的に連携し、協会が認定する認定補聴器技能者や認定補聴器専門店は、学会が委嘱する補聴器相談医の診断・指導に基づいて、適切な適合調整や相談対応を行う。
補聴器はつけるだけでは聞こえません。
音は耳だけでなく、脳でも聞いています。補聴器をつけると、いままで聞こえていなかった音が急に入ってくるので、はじめは脳がうまく対処できず、また自分の声がすこし響くので、ほぼ100%の方が何らかの違和感、不快感を感じます。そこから、認定補聴器技能者が、ご本人の検査結果にもとづいて、音の調整と、耳栓部分の形を工夫をして、違和感や不快な症状を軽減し、効果を最大限発揮できるようにしていきます。そしてこれが重要ですが、補聴器は必要な時だけ使うのではなく、普段からなるべく長く装用し、生活環境の中で、補聴器から出る音と脳の感じ方をうまくすり合わせるリハビリを行うことで、初めて快適な聞こえが可能となります。
診察
問診で、どのような状況で難聴に困っているのか、どのような仕事をされているのか、ご家族と一緒に住んでいるのか、一人暮らしなのか、など、ご本人の生活環境を伺います。次に診察で、治療が必要な耳の疾患がないか、耳の形は問題ないか、などを確認します。その後、純音聴力検査および語音聴力検査を行います。純音聴力検査は単調な音に対する聴力を調べます。語音聴力検査では言葉の認識がどの程度できるのかを判定します。
これらの結果により、客観的に補聴器が必要かどうか、補聴器の効果を見込めるのかをアドバイスします。
補聴器のフィッティング(調整)・貸し出し・機種選択
補聴器の効果を見込める様であれば、医師と認定補聴器技能者の立ち会いのもと、補聴器を装用していただきます。機種は、耳あな型を希望される場合でも、初めは調整しやすい耳掛け型を使用します。初めて装用する段階で、すでにご本人の検査結果に合わせてある程度調整をしてあります。補聴器をつけて実際のご本人の聞こえ方を伺い、再度周波数ごとに必要な音圧を調整しては、また試すことを繰り返し、より効果を発揮できるようにします。これをフィッティングと言います。音の調整だけでなく、耳に入れる耳栓部分を調整したり、実際に補聴器を耳につける手技を練習したりします。最後に、補聴器をつけない状態と、つけた状態で、どれくらい聴こえが改善しているのかを検査します。この検査は通常の聴力検査と違い、検査用のヘッドホンはつけないで、部屋のスピーカーから出る音を両耳聞いて測定します(音場検査)。また、調整した補聴器から設定した通りの音質、音量が出ているか、グラフ化して評価します(補聴器特性試験)。
当日試した補聴器をそのまま無料で貸し出しますので、ご自宅に持ち帰り、実際の生活環境の中で試していただきます。はじめは不快感が残りますが、慣れるために自宅でも使い続けることが大事です。1〜2週間後に再診していただき、使用感などを詳しくうかがいながら再度調整していきます。貸し出しの期間で、購入費用や希望される機種(耳掛け型、耳あな型等)について相談します。
補聴器の購入
当院の補聴器外来に数回通院した結果、ご自身でも効果と必要性を感じ、費用も納得できた場合は、購入に進みます。購入は認定補聴器専門店で行います。
ご自身が、補聴器の効果を感じられなかったり、費用と効果の割が合わないと感じた場合は購入の必要はありません。
患者さんが補聴器を購入することで、当院が何らかの報酬を受けることはいっさいありません。
アフターケア
補聴器を購入して装用が安定したら、補聴器外来は一旦卒業し、以後は数ヶ月に一回程度、当院の一般外来を再診していただきます。一般外来では補聴器が問題なく使えているかどうか、耳に炎症を起こしていないか、耳垢がたまっていないか、などを診察します。とくに、耳垢のたまりは個人差があり、補聴器の詰まりの原因になるため、ケアが必要です。
聞こえの状態は年々変化しますので、年に1~2回は聴力検査を行い、定期的に補聴器の調整と点検、清掃を行うことで、長く快適に補聴器をお使いいただけます。補聴器の点検と清掃は補聴器店の店舗で行っていただきます。
箱型(ポケット型)
5万円〜
本体を胸のポケットなどにいれて、繋がれているイヤホンを装着して使用します。機能は限局されますが操作が簡単なため、ご高齢で小さな機器を扱うことが難しい方が、必要時にだけ使用する場合によく用いられています。
耳掛け型補聴器
片方で15〜60万円台
耳に掛けて使用します。機器部分が耳の後ろになり、細いチューブで耳に入れる耳栓部分と繋がっています。長所は、耳あな型より媒体が大きいため、より安価に機能を搭載しやすい、ハウリングが起こりにくいことです。短所は耳あな型より目立ち、マスクやメガネがしにくいことです。ただし、最近は見た目が小さくスタイリッシュになり、髪型によっては補聴器が髪の毛で完全に隠れて、耳あな型より目立たないこともあります。隠さずに、逆にデコレーションをして楽しんでいる方もいます。マスクやメガネもちょっとした工夫で使用できます。
耳栓部分は規制サイズの中からご本人にあったものを選びますが、耳型をとって、この部分をオーダーメイド(イヤーモールド)にすると、ずれにくく、ハウリングが軽減し、より聞き取りがよくなることがあります。
耳あな型オーダーメイド補聴器
片方で15〜60万円台
耳型をとってオーダーメイドで作成し、耳のあなの入り口の窪みに入れて使用します。長所は目立ちにくく、メガネやマスクをしやすいこと、動いてもずれたり抜けたりしにくく、装用が安定していることです。スポーツをする方にも向いています。短所は耳をピッタリ塞ぐことにより閉塞感が強いこと、ハウリングが起こりやすいことです。
耳掛け型と耳あな型は、それぞれ長所と短所がありますが、最近は機器の進化によりそれぞれの短所が補われて、大きな差がなくなっていますので、ご本人の使用しやすいものを選択するのが良いと思います。
それぞれで電池式と、充電式がありますが、補聴器の電池はとても小さくて交換がしにくいのと、電池が切れたことにも気づきにくいので、充電式を選ぶ方が増えています。
補聴器の価格は、上記のように幅広いですが、一般的には、片側20~30万円くらいの価格帯のものを選択していただいています。最も高価な60万円台になると、AI機能を使って音を調整しますが、多くの方はそこまでは必要ないですし、残念ながらせっかく購入しても中には使わなくなる方もいるので、初回はあまり高価なものを選ばない方が良いでしょう。また、そこまで高価でなくても、スマートフォン(iPhoneを中心に)と連携し、補聴器を通して通話が出来たり、音楽などを聴く機能がついている機種があります。
できれば両耳で使用するのが基本です。両耳に装用することで、どちらから話しかけられても聞こえやすい、音の方向がわかりやすい、言葉を理解しやすくなる、騒音の中でも必要な音を拾いやすい等、多くのメリットがあり、補聴器本来の効果が発揮されます。
デメリットはその費用で、ただでさえ高額な補聴器の費用が倍になってしまいますので、両耳にこだわってしまうと、補聴器をはじめるハードルが高くなってしまいます。
片耳でも効果は得られますので、無理のないように検討すると良いと思います。
各自治体が決めた条件に当てはまる方が対象になります。
基本的には中等度の難聴の方が対象で、補聴器を開始するのにちょうど適しているため、当院でも多くの方が助成を利用しています。申請の手順は自治体によって様々ですので、ご自身でご確認ください。申請書を持参いただければ当院で必要部分を記載します。(葛飾区の場合は当院に申請書があります。)
2026年5月現在、葛飾区では、葛飾区在住、65歳以上、両耳の聴力レベルが40デシベル以上70デシベル未満(中等度難聴)、医師が必要と判断した方が対象になり、
| 住民税課税の方 | 72,450円 |
|---|---|
| 住民税非課税の方 | 144,900円 |
の補助金が助成されます。特に購入できる機種の制限はありません。
足立区では、課税に関係なく、一律50,000円です。
江戸川区は住民税課税の方が20,000円、住民税非課税の方が40,000円です。
聴覚障害に関する障害者手帳をお持ちの方は、お住まいの自治体から補聴器購入にかかる費用の一定額が支給されます。自治体で申請用の申請書を受け取り、受診の際にご持参ください。身体障害者福祉法15条指定医が記載します。
また、補聴器の購入費用は医療費控除の対象になっており、控除を受ける場合、日本耳鼻咽喉科学会が認定した補聴器相談医(当院に所属しています)が記載した、“補聴器適合に関する診療情報提供書”が必要になります。
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