- 辛い痛みは早く改善するように努めます。
- のど風邪に対しても、それぞれの患者さんの状態にあった治療を行います。
- のどを観察する内視鏡(ファイバースコープ)は細径のものを使用しています。できるだけ苦痛がない様に行います。
- 大学病院で、多数の炎症や、救急疾患、まれな病気を診療し、がん専門病院では極めて多数の口、のどの悪性腫瘍と機能障害を経験しています。これらの経験を活かし、のどの症状一つをとっても様々な観点から診療を行っています。
くち、のどの病気
くち、のどの病気

急性咽頭喉頭炎
もっとも多い疾患で、いわゆる「のど風邪」のことです。のど(咽頭や喉頭)の粘膜にウイルスや細菌が感染して炎症を起こし、腫れや飲み込む時の痛み、発熱、倦怠感などが現れます。多くの場合、のどだけではなく鼻や気管など、気道全体の炎症を伴います。炎症を抑える薬や、細菌が関与している場合には状況によって抗生剤による治療を行います。十分に水分と栄養を摂り、休養を取ることも大切です。
急性扁桃炎
のどの奥の両側にある「口蓋扁桃(こうがいへんとう)」で細菌が増えることによって炎症が起こり腫れて、白い膿(うみ)がつきます。強い痛みで飲み込むことが辛く、ひどくなると話すことも難しくなり、高熱(38〜40℃)、首のリンパ節の腫れなどの症状が現れます。多くの場合は細菌感染であり、治療には抗生剤、消炎剤の投与が必要です。中途半端に治療をやめるとすぐに再燃するため、良くなったとおもっても、一定期間薬を続けてしっかり治し切ることも大事です。
明確な規定はありませんが、急性扁桃炎を年におおよそ4-5回以上繰り返し、その度に高い熱が出て仕事を休まなければならないような病状を指します。できるだけ薬で治療を行いますが、それでも繰り返す場合には、手術で扁桃を摘出する(口蓋扁桃摘出術)方法があります。「扁桃腺をとると免疫力が落ちるから取らないほうがよい」と考えられることがありますが、そういったことはありません。むしろ何度も強い扁桃炎を繰り返すことが、体にとっても社会生活にも負担になるため、改善しない場合には手術を考えます。その前にまずは薬で毎回の扁桃炎をしっかり治し切ること、要因となる疲労や、不規則な生活、不十分な栄養状態などがあれば、見直すことが大事です。なお、のどの炎症を繰り返す場合、それが急性扁桃炎ではなく、ウイルス性ののど風邪であることも多々あります。その場合には扁桃摘出術を行っても意味がありません。繰り返すのど痛みが本当に扁桃炎なのか、あるいは風邪なのかを耳鼻咽喉科で確認する必要があります。
扁桃周囲膿瘍
(へんとうしゅういのうよう)
急性扁桃炎が悪化し、扁桃の周りに膿汁がたまる状態です。急速に進行し、腫れた感じが非常に強く、のどの激しい痛み、高熱に加え、話しにくく、口が開きにくくなるのが特徴です。重症化すると膿が下行し、首の深部や胸まで膿が広がり、呼吸に悪影響を与えて命に関わることがあります。気道閉塞の可能性も考えながら、早期に適切な抗生剤、消炎剤の投与や、膿出す処置が必要になります。
急性喉頭蓋炎、喉頭浮腫
喉頭蓋(こうとうがい)は、声帯の少し上にあり、物を食べた時に誤って気道に入らないよう、気管にふたをする役割を担っています。ここに細菌やウイルスが感染し、急性の炎症が起きた状態を急性喉頭蓋炎、腫れた状態を喉頭浮腫といいます。初期段階では、痛みや異物感程度の症状しか認めませんが、日ではなく時間の単位で急速に悪くなって、激しい痛みで唾液ですら飲み込めなくなり、声がこもった様になり話しにくくなります。症状だけでは他の病気と区別がつかないため、診断が遅れて空気の通り道をふさいでしまい、呼吸困難、窒息にいたる危険性もあります。耳鼻咽喉科では、こういった疾患も常に念頭において、のどの診療を行っています。
急性声帯炎、喉頭炎
ウイルスや細菌感染による急性咽頭喉頭炎のうち、特にのどの奥にある喉頭の声帯を中心に炎症が起きて、声が出にくくなった状況を指します。感染を起こさなくても、声を使いすぎて発症することもあります。主な症状は「声のかれ(嗄声)」です。その他、痛みや乾燥感、止まらない咳、痰などがみられます。治療には、炎症を抑える薬が必要で、細菌感染が疑われる場合には抗生剤を併用し、状況によってネブライザー治療を行います。一定期間なるべく声を出さずにのどを休める(沈黙療法)ことも大事です。炎症が強い場合には、なかなか通常の抗炎症薬では治らないこと、呼吸に悪影響をきたすこと、遷延すると声帯が固くなり炎症が治ったあとも声が戻らないため、短期間のステロイド投与を行うこともあります。
伝染性単核球症
先述の急性扁桃炎と同じ様に、扁桃腺の腫れと強い痛み、首のリンパ節の腫れ、持続する高熱、倦怠感が主な症状で、肝臓と脾臓が腫れて肝機能障害を伴うことが特徴です。時に皮疹を生じます。10歳台代後半から20歳台に多く、のどの痛みや発熱が1週間程度続き、肝臓が正常値まで回復するまでに数週間を要します。
原因はEBウイルスの感染です。あまり聞き慣れないウイルスと思いますが、EBウイルスは日本人のほとんどが子供の頃に知らないうちにかかっているウイルスで、感染したことがない一部の方が、思春期以降に初めて感染した時にこの疾患を発症します。
急性扁桃炎との鑑別が難しく、扁桃腺やアデノイドの腫れと白苔の付着具合、腫れている首のリンパ節の位置、患者さんの年齢等でこの疾患を疑い、血液検査で、特有のリンパ球の存在や、肝臓の値が上がっていることで診断をつけます。
EBウイルスに効果がある薬はなく、治療は静養、安静で自然回復を待ちます。ステロイド剤を使用することで早期に改善が得られる事も多く経験していますが、使わなくても自然に回復する疾患であるため、ステロイド剤の使用に関しては意見が分かれるところです。ペニシリン系の抗生物質を使用すると薬疹がでることがあります。
声帯ポリープ、ポリープ様声帯
声帯ポリープは炎症によって声帯の辺縁にやわらかく赤い突起が出来てしまう病気で、声がかれてうまく声が出なくなります。初期であれば、声を安静に保ち、炎症を抑える内服薬、吸入薬等を用いることで改善することもありますが、改善しない場合には手術で切除することを検討します。一方、長年の喫煙、飲酒などにより、声帯全体の粘膜の下の組織がゼリー状になって腫れてしまい、声が低くしゃがれた状態になるのがポリープ様声帯です。薬である程度改善しますが完治までは難しく、患者さんがさらに改善を希望する場合には手術を行います。どちらも喫煙習慣がある場合にはせっかく手術をして再発してしまうため、禁煙が大事です。
声帯結節
日常的に声を酷使する職業の方に生じます(歌手、教師、保育士や接客業など)。声帯の酷使のために、声帯表面に小さな「たこ」のような突起が出来てしまい、きれいに声帯が閉じないために声がかすれます。主な症状は声がれで、のどの違和感を伴うこともあります。初期であれば、声を休めることや消炎剤で改善することもあります。改善しない場合は、発声の仕方を改善させる音声治療や、手術、あるいはその両者が必要になります。声帯結節の手術は、体に負担がかかる大きな手術ではありませんが、繊細な手術手技が必要で、手術前後の専門的な音声治療も大事になります。また声が職業、なりわいに影響する方が多いため、必要があれば十分な経験のある施設へご紹介します。
口内炎
最もよくみられるのはアフタ性口内炎です。食事や会話で強く痛み、周囲が赤く中心に白い潰瘍を形成します。噛んだり、歯ブラシで傷つけたり、やけどなどの傷から雑菌が入り込んで炎症が起こったり、ストレスや疲労による免疫力の低下、ビタミンなどの栄養不足、口の中の不衛生といった多くの要因が発症に関係するといわれています。塗り薬や、細菌感染を伴って周囲に炎症がひろがっている場合には、抗生剤や、消炎剤、ビタミン剤などを併用して治療します。
ウイルス性口内炎は大人では単純ヘルペス、水痘帯状疱疹ウイルス、こどもは手足口病、ヘルパンギーナ(夏風邪)、はしかなどのウイルスが原因となることがあります。多くは対症療法で治療しますが、水痘帯状疱疹ウイルスによるものは、口の粘膜の左右どちらか半分に発症し、神経痛を伴い重症化しやすいため、早期に抗ウイルス薬の治療が必要です。
カンジダ性口内炎は、カンジダという真菌(カビ)の一種が原因で、糖尿病の方や喘息治療に用いる吸入ステロイド剤を使用している方に発症しやすくなります。抗真菌薬の塗り薬やシロップを口に含んで治療します。
口内炎が一度に何カ所も出来たり、発症を何度も繰り返す場合は、全身性の自己免疫疾患の一症状として現れていることもあります。
舌や口の中にできた口内炎が、2週間以上治らない場合には、舌がんや口腔がんの心配があるため、頭頸部がんの専門家である耳鼻咽喉科を受診してください。(後述)
舌炎
舌全体が赤くなり、ピリピリとした痛みが続きます。亜鉛不足が原因となるといわれていますが、一般的な健康な方で実際に亜鉛が不足している方はあまり見かけません。原因不明であるため、ストレスが原因の一つと考えられており、自然の経過や、ビタミン剤の内服等で改善することが多いです。まれにカンジダ菌が原因になることもあり、その見た目から疑われるときは抗真菌薬の外用薬やシロップを口に含む治療をすると改善します。舌ブラシはあまりおすすめしていません。
乳頭腫
粘膜に小さな乳頭様(カリフラワー様)の隆起ができる腫瘍です。低リスク型のヒトパピローマウイルス感染が原因と考えられています。自覚症状はないため、のどの診察や胃カメラをやった時に偶然発見されることが多いです。これ自体が悪性化することは滅多にありませんが、まだわかっていないことも多いため、発見されたらときどき経過観察のため受診していただくことをおすすめします。
小唾液腺腫瘍
口やのどのあらゆるところに大小さまざまなしこりとして発生します。目で見えない小さな唾液腺から発生する腫瘍で、良性も多いですが、良性でも将来悪性化したり、悪性との鑑別が難しい腫瘍です。口の中のしこりが心配であれば耳鼻咽喉科を受診してください。
繊維腫
比較的多く見られる良性腫瘍で、舌や頬の内側によく見られます。ツルッとした5-10mmほどのしこりで、あまり痛みは伴いません。歯や義歯による長期間の刺激で発生すると考えられています。経過観察がよいですが、大きくなって噛んでしまうようなことがあれば手術により切除します。
歯原性腫瘍
歯をつくっているさまざまな組織から発生するまれな腫瘍で、耳鼻咽喉科での診断や治療は難しく、多くの場合は歯科口腔外科が専門になります。
咽頭がん、喉頭がん
のどに歪な(不整形な)しこりや潰瘍を生じます。声帯にできるものはすぐに声が嗄れるため、患者さんも病院を受診して早期に発見されますが、他の多くはなかなか自覚症状が出ないため、進行して障害が出てから発見されたり、すでに首のリンパ節に転移を起こした状態で首が腫れることで発見されることもめずらしくありません。
進行すると、食べたり、話したり、息をすることが出来なくなり、他の臓器に転移を起こして命に関わるため、なるべく早期に発見したい病気です。しかしのどは、単純な管ではなく複雑な形をしていて、あちこちに扁桃腺の組織があるので、かなり“でこぼこ”しています。唾液の付着や、ヒダ様の構造による死角も多く、かつ内視鏡で見ている最中ものどは動くため、耳鼻科の中のがんの専門医でさえも初期の段階でがんを発見することが難しいこともあります。
ほとんどの場合は飲酒が原因になるため、おおむね1日にビールを500ml以上、週3回以上飲酒する方、飲酒すると顔が赤くなる方は要注意です。飲酒以外では高リスク型のヒトパピローマウイルス感染による中咽頭がんが近年増加しています。ちょっとした違和感、軽い痛みがあって、たとえば2週間以上改善しないような場合には、一応、がんのことも考えて耳鼻咽喉科専門医の診察を受けることをおすすめします。初回の診療で異常が発見できなくても、経過観察を続けてタイミングを変えると発見されることもあります。
舌がん、口腔がんについて
一番多いのは舌がんです。ほとんどのものは、舌の左右の縁(ふち)にできます。早期には平坦ですが粘膜が白く変化し、部分的に赤いところが混在します。進行すると徐々にへこみ(潰瘍)と歪な隆起が組み合わさった様な形になります。原因は舌の縁が歯と長期間接触することによって、細胞が前がん状態から徐々にがん細胞に変化して発症します。歯に触れない舌の下面、上面にできることはめったにありません。他、歯肉や、上顎、頬のうちがわにもお同じ様な形でがんできることがあります。
嚥下障害(のみこみの障害)
通常ものを飲み込む時には、無意識のうちに口やのどの多数の筋肉、脳から出る3つの神経が複雑に時間差をもって連携して動きます。また構造的にも気管にものが入らない様にする蓋(喉頭蓋)があります。これらの筋肉、神経の働き、のどの構造が一つでも、あるいは組み合わさって障害されることで飲み込みができなくなります。うまく飲めなければ、水が飲めずに脱水になり、食事が取れずに痩せ細って、物が溢れる日本の現代において、栄養失調で命を落とすことになります。
また、人類が直立歩行を始め、手や道具を使えるようになって進化した代償として、うまく飲み込めないと重力で食事や水が気管に落ちて肺炎になってしまう様になりました。これを誤嚥性肺炎といい、日本人の死亡率の上位を占めます。
嚥下障害は多くの場合は加齢により神経や筋肉の機能が衰えて生じますが、耳鼻科で嚥下内視鏡を行ってのみこみの状態を評価、リハビリの指導をします。
また、加齢以外にも、炎症による腫れや、何らかの神経の麻痺、腫瘍による構造の異常のことも少なくないため、それらを鑑別する必要があります。
耳鼻咽喉科は、脳から出る飲み込みの神経、口やのどの筋肉の専門科です。普段からそれぞれの神経を実際に手術で見て操作したり、病気があれば機能を考えて神経や筋肉を切除したり、また上手く飲み込めるように再建手術をしています。飲み込みのことが気になったら耳鼻咽喉科を受診してください。
声の機能障害
声帯は一見正常に見えるのに、うまく働かないために声が出せなくなることがあります。代表的なものは、加齢によるもので、声帯の萎縮といって、筋肉が細くなったり組織の張りが低下することで起こります。張りの低下で声帯にくぼみができるため、声帯みぞ症と言われます。声を出すリハビリが大事ですが、痩せた声帯に脂肪やコラーゲンを注入して改善させる手術治療もあります。診察して必要があれば十分な経験のある施設に紹介します。
他に、声帯を動かす神経の麻痺で声帯が動かなくなる声帯麻痺(反回神経麻痺)があります。吐息のような声になり、ウイルスによる神経の炎症が原因であれば自然に治ることもありますが、首から胸の間の神経の通り道に腫瘍が隠れていて麻痺を起こすこともあるため、状況によって首から胸までを含めた精密検査を行います。
他、神経の病気で、意志と関係なくのどに力が入って声が詰まってしまったり、精神的な影響で力が入らなくなる病気もあります。
咽喉頭異常感症
(いんこうとういじょうかんしょう)
診察や検査をしても異常が見つからないにもかかわらず、「のどに何かがつまっている感じ」「常に痰が絡んでいる」「圧迫感がある」といった不快感が続く状態です。ストレスや自律神経の乱れ、更年期障害などが原因になります。多くの方はとても心配されて耳鼻科を受診されますが“異常がない”と言われても症状が取れないため、逆に心配が強くなる方もいます。
実は“異常がない”と診断することは非常に難しく、十分な経験にもとづいてのどを詳細に、繰り返し観察し、先述の炎症や、後述の胃酸の逆流、腫瘍などが隠れていないかしっかり評価する必要があります。少し時間をおいて再度診察することで、前回は確認できなかった病気が発見されることもあります。そういった経緯を踏んで、本当に異常がなければ、治療の第一歩はご本人に安心していただくことです。希望があれば症状を軽減するための漢方薬による治療を行います。
胃食道逆流症
(逆流性食道炎)による
のどの違和感、痛み、咳
胃酸が食道やのどまで逆流し、粘膜を刺激して、のどの違和感や痛み、痰がないのに絡んでいる感じ、夜間の咳など引き起こす病気です。典型的には胸焼けや酸っぱい胃酸が上がってくる感じがしますが、その様な自覚症状を伴わないことも多いです。また胃カメラで食道に炎症、ただれがあれば確定診断に至りますが、食道に異常を認めない場合もあります。診断を兼ねた治療として、胃酸の分泌を抑える薬の内服を開始し、もしそれで症状が改善したらこの疾患と判断します。生活習慣の改善(脂っこい食事を控える、食後すぐに横にならないなど)も大事です。症状が続く場合には、胃カメラやCTで食道と胃の接合部のヘルニアや、詳細には食道内の24時間胃酸モニタリングを行う検査もあります。
咽頭異物
のどに異物が入っている状態です。
魚の骨がのどに刺さって来院される方が多いです。まず視診や内視鏡で魚の骨を探します。ブリの骨の様に太いものは比較的容易に発見できますが、経験上難しいのは、サンマやうなぎの骨です。非常に細くて、半透明であるため、唾液と判別がつかず、なかなか見つからないことがあります。
魚の骨が発見できた場合には、放置すると奥に潜り込んでしまい、後に重症細菌感染症の原因になることがあるため、基本的には摘出を行います。手前にある異物は直接鉗子を使って摘出出来ることが多いですが、奥にあるものは内視鏡と内視鏡用鉗子を使って摘出する必要があります。魚の骨以外には、薬の包装シート(PTPシート)や、コイン、ボタン型電池などを誤って飲み込んでしまうことがあります。
すでに食道に入ってしまった場合には、耳鼻科の内視鏡ではなく内科や消化器科で胃カメラを使って取って頂く必要があります。
TOP