- カールツァイス社製の高解像度の顕微鏡を使用して耳を観察し、診断力を高め、的確な処置を行います。
- 外耳炎を繰り返す原因になる“みみのかゆみ”も重要視して治療します。
- 繰り返す中耳炎、滲出性中耳炎は、まず鼻をよくして、根気良く改善を促していきます。
耳の病気(外耳、中耳)
耳の病気(外耳、中耳)

外耳炎
耳の中の皮膚に起こる炎症で、症状は、耳の痛み、かゆみ、ヒリヒリ感、耳だれなどです。ひどくなると腫れて完全に塞がってしまい、耳閉感や難聴、耳鳴りを伴ったり、耐え難い痛みを生じます。
多くは綿棒や耳かきでの刺激、つめなどで耳の中を傷つけてしまい、そこに細菌が入ることで発症します。外耳道湿疹(次の項目に記載)を併発していることも多く、痒みが辛いためについ触りすぎてしまい、外耳炎を繰り返します。
治療は患部の処置と、抗菌薬や消炎剤の点耳薬・軟膏を使用します。炎症が強い場合には、それに内服薬を併用して治療する必要があります。点耳薬は耳を上にして寝て、耳の穴の中に薬液を6~8滴ほど落とし、10分間安静にする耳浴(じよく)をすると効果的です。
痛みや炎症が改善したあとに、かゆみの原因になる外耳道湿疹があれば、治療を継続していきます。
外耳道湿疹
耳の入り口や、耳の中の皮膚に湿疹が出来て、痒みが出たり、カサカサしたり、あるいは湿った感じになる状態です。湿疹になると皮膚のバリアがなくなるため、綿棒等で触りすぎると容易に細菌が増えて、外耳炎に移行します。
湿疹になる原因として、第一に触りすぎの事が多いですが、ダニやハウスダスト、花粉によるアレルギーがあることもあります。特にダニやハウスダストであれば一年中耳が痒くなります。
触るなと言われても、持続する痒みは意外と辛いものなので、つい触ってしまい、外耳炎を繰り返します。一年中痒みが辛い場合には、他のアレルギー疾患と同様、抗アレルギー剤の内服を継続すると改善することもありますのでご相談ください。
外耳道真菌症
外耳炎のうち、カビ(真菌)が感染して炎症を起こす疾患です。顕微鏡で観察すると、耳の中にカビの菌糸が見えることもあります。
外耳炎と同じ症状を起こしますが、カビが原因であると、通常の抗生剤が効かないため、治りにくく、繰り返す原因になります。
治療は、処置で耳の中に見えるカビをきれいに除去したうえで、抗真菌剤の塗布を行います。
もともと湿疹があることや、一般細菌が混合感染を起こしていることも多いため、通常の抗生剤や、抗アレルギー薬の内服を併用して治療を行うこともあります。
耳垢栓塞(じこうせんそく)
耳垢栓塞は耳の穴(外耳道)に、耳垢が大量に詰まった状態をいい、症状として耳閉感、難聴、耳鳴りなどが起こることがあります。顕微鏡で耳の中を観察しながら、鉗子や吸引、洗浄により耳垢を取り除きます。たかが“耳あか”と思われるかもしれませんが、耳垢が硬かったり、逆にもろくて鉗子で掴むと豆腐のように崩れたりするため、狭い耳の中で顕微鏡を見ながら取るのは意外と難しく、時間がかかることもあります。耳垢が皮膚にくっついていたり、硬くて取れない場合には、点耳薬で耳垢を軟らかくしてから後日取り除くこともあります。
外耳道真珠腫
耳の中の皮膚が角化(厚く白くなる)を起こし、それが増殖して耳の中の皮膚と、さらには骨も溶かして深部に進展していく疾患です。角化物は白く見えることから真珠腫とよばれます。
一般的に「真珠腫」というと中耳にできる「真珠腫性中耳炎」のことを指しますが、この疾患は外耳にできるもので区別が必要です。大量の耳垢が詰まって耳垢栓塞になり、皮膚を圧迫したり刺激したりして発症すると考えられています。耳の穴の骨を壊していくため、進行するとそばにある顔面神経に影響がでて顔が麻痺したり、顎の関節が破壊されていきます。
治療は、処置による真珠腫の除去が第一です。真珠腫を除去すると、狭い範囲で削れた骨が露出しますので、ここに正常な皮膚が再生するように、促していきます。処置は少しだけ痛みや出血を伴うことがあります。
外耳道がん(聴器がん)
耳にもがんができることがあります。
主に、耳の掃除をしすぎてしまい、慢性的に外耳炎がある方に発生しますが、通常の外耳炎との区別が難しいです。触ると出血しやすい時や、耳の中の皮膚に肉の盛り上がりができているときには、鑑別が必要です。非常に稀な疾患ですが、当院ではこれまでの経験をもとに診断を行い、疑いがあり組織検査を要する場合には適切な施設へ紹介します。
急性中耳炎
鼓膜より内側の中耳に細菌やウイルスが感染して炎症を起こす疾患です。中耳は鼻やのどの一番上(上咽頭)と耳管でつながっているため、風邪をひいたときに細菌やウイルスが耳管から中耳に入って感染を起こし、発症します。
大人もかかりますが、特に1歳から3歳くらいまでの小児は、構造的に鼻から耳に細菌が入りやすく、年齢的に細菌に対する免疫力が弱い期間であるため、風邪をひくと中耳炎にかかりやすいです。
症状は、耳がつまった感じから痛みが出現し、鼓膜の奥に膿が溜まります。膿が溜まりすぎると、鼓膜が破れて外に膿が流れ出て耳だれが出現します。炎症の状態によって熱が出ますが、熱が出ないこともあります。
中耳炎の反復について
特に1歳から3歳くらいのお子さんは、細菌に対する免疫力が弱く、ちょうど同じ頃に本人や、兄弟が保育園に行き始めるため、保育園でも家でも風邪をうつしあって、その度に中耳炎になることがしばしばあります。お子さんによっては、ほんの数日良くなったと思ったら、またすぐに風邪をひいて色のついた鼻漏が再燃し、同様に中耳炎も治りきらないうちにまた悪くなります。ご両親は、お子さんが薬をずっと飲み続けることが心配になりますし、お仕事がある中、通院も大変だと思います。しかし、鼻かぜや中耳炎を治療しないと、耳だれがつづいて鼓膜に穴が残ってしまったり(慢性中耳炎の項目を参照)、滲出性中耳炎に移行したり、近年は少なくなりましたが急性乳様突起炎という重症感染症に移行することもあります。3歳ごろになると自然と落ち着いてくるので、その間しっかり薬を使って治療をして乗り越えることが大事です。
一般的には風邪の治療に抗生剤は必要ありませんが、風邪を引くといつも長期間鼻漏が続いたり、中耳炎を繰り返すお子さんは、抗生剤を使わずに自力で治すのがなかなか難しいです。色のついた鼻漏が多く出ていて、中耳に膿が溜まったり、膿が減っても鼓膜の炎症が治りきらないような状態であれば、しっかり抗生剤を使い、落ち着いたらすこしでも薬を休む、というふうにしていきます。できれば、初めに治療をするときや、病状が変わったときには、病原菌が住んでいる鼻の突き当たりから細菌検査をして、その結果で治療に適した抗生剤を選んだり、抗生剤が効きにくい薬剤耐性菌がいないかどうかを見張っていきます。(鼻の奥なので、お子さんは嫌がると思いますが、必要性をご理解ください。)
あまりに繰り返したり、重篤になる場合には、小児科で血液検査をお願いして、IgG2という免疫物質が極端に少なくないか調べてもらいます。たいていは調べると年齢的な影響で正常より少ないのですが、特に重篤な場合には、免疫グロブリン補充療法を検討することがあります。ただし免疫グロブリンは、治療効果も安全性も高いのですが、血液製剤で、まれに副作用がでるため、よほど重篤でなければ、使わずに通常の薬の治療を継続することがほとんどです。
滲出性(しんしゅつせい)中耳炎
鼓膜の内側にある中耳に水が溜まって耳がつまった感じや難聴が起こります。
滲出性中耳炎は、特に中耳炎を繰り返す小児に多く、風邪や急性中耳炎のあとに、鼻やアデノイド(鼻の突き当たりにある扁桃腺)に炎症が残ってしまうことで起こります.鼻やアデノイドに炎症があると、耳管がつまってしまうので、中耳の空気の入れ替えができず陰圧になって水が滲み出て(滲出液)溜まります。大人であれば不快なため、すぐに病院にかかりますが、小児はあまり症状を訴えないため、風邪の後に気づかずに滲出性中耳炎になっていて、長期間気付かれずに続いていることもあります。
改善しないと、陰圧のために鼓膜が中耳にくっついて難聴が残ったり、真珠腫性中耳炎の原因になると言われています。また耳の奥にある乳突洞という骨が正常に発達せず、やはり真珠腫中耳炎の発生に影響を及ぼします。
大人では、急性中耳炎にならなくても、耳管を介して鼻と耳の圧力調整がうまくできない方(耳抜きができない方)に突然、あるいは飛行機搭乗の後に起こることがあります。
小児の場合の多くは、鼻やアデノイドの細菌感染が原因であるため、治療は一定期間抗生剤を使用して細菌を減らし、落ち着いた段階でマクロライド系抗生物質の抗炎症作用を利用して治療を継続します。滲出液を排出するのを助ける去痰剤や、鼻漏が多ければ抗アレルギー剤や、点鼻薬も併用します。細菌感染が落ち着いたら、抗生剤をやめて去痰剤だけにしたり、薬を全く使わないで経過観察を行うこともあります。それでも3ヶ月以上改善しない場合は、(実際には期間だけではなく、それまでの経過や、鼓膜の状態によって考えます)中耳の換気ができるように、鼓膜チューブを入れたり、耳管を塞いで細菌の温床になっているアデノイドを切除する手術を検討することがあります。
大人でも同様に治療しますが、ご高齢の方であまり感染を伴っていない場合は、薬の治療で改善しにくく、特にご高齢の方は鼓膜切開や鼓膜チューブを留置すると、将来鼓膜に穴が残りやすいため、治療は悩ましいところです。当院では、器具を使って耳抜きの練習をしていただくことで、改善することが多いです。
慢性中耳炎
こどものころに急性中耳炎、耳漏を繰り返した結果、鼓膜に大きな穴が残ってしまい、中耳の炎症が慢性的に続いている状態を慢性中耳炎といいます。風邪の原因となる微生物が鼻とつながる耳管から入るだけでなく、鼓膜に穴があいていることで外耳道からも中耳に入り込むようになり、一度良くなっても、体調を崩して免疫力が下がると耳漏が再燃します。鼓膜の穴の大きさや、中耳の状態によって、難聴や耳鳴りを生じます。
耳漏がある場合、外耳道や中耳を洗浄し、抗菌薬を中耳に直接入れる処置や、内服による治療を行います。状態によって手術により鼓膜の穴を塞いだり、耳の奥の乳突洞という空洞から悪い粘膜を除去して、難聴を改善させる鼓室形成術が考慮されることもあります。
真珠腫性中耳炎
中耳の陰圧により、鼓膜の上の方が奥に引き込まれて袋状になり、その袋の中に皮膚のカスが溜まって、白い真珠のような塊になって広がる疾患です。音を伝える耳小骨を壊して広がるため、難聴、耳鳴りを生じ、時々細菌感染を起こして耳だれが出ます。一部の進行例では、さらに広がって周囲の側頭骨を壊して、中にある顔面神経が麻痺を起こしたり、頭蓋骨の中に入り込んで脳に膿が溜まることがあります。
原因ははっきりわかっていませんが、耳と鼻を繋ぐ耳管の働きがわるいのと、こどもの頃に滲出性中耳炎が長期に続いたことで、空気を貯める骨の空洞(乳突蜂巣)が正常に発育しないために、中耳が陰圧になりやすくなって発症するのではないかと考えられています。
治療は手術によって、耳の中に広がった真珠腫を摘出し、壊れた耳小骨(音を伝える骨)を取り除いて、新たに音が伝わる構造を再建します(鼓室形成術)。
耳硬化症
中耳にある、音を伝える3つの耳小骨のうち、一番奥のあぶみ骨が徐々に固くなって、音がうまく伝わらなくなり、難聴になる疾患です。多くの場合は両耳ですが、片耳だけのこともあります。
男性の方もなりますが、女性に多く、思春期以後にゆっくりと進行し、40歳くらいから難聴と耳鳴りを自覚する様になります。まれにめまいもあります。
原因はわかっておらず、遺伝子や女性ホルモンの影響などが考えられています。
聴力検査で、音を聞く「神経の聴こえ」は2000Hzの音だけ低下し他は正常ですが、「音を伝える聴こえ」は低音域を中心に難聴がみられ、経過観察をすると、ゆっくりと年単位で進行していくのが特徴です。他、検査であぶみ骨のうごきを調べて診断します。
治療は、難聴の程度と進行の具合をみて考えていきます。軽度の難聴であれば治療はせずに経過観察をしますが、難聴で日常生活に支障をきたす様であれば、補聴器を使うか、手術で固くなったあぶみ骨を取り外し、人工の耳小骨と取り替えます(あぶみ骨手術)。手術は非常に繊細な手技が必要ですが、根本的な治療になり、効果も高く、80%以上の方が聴こえが改善します。
耳管の疾患
鼻と耳の奥は耳管(じかん)と呼ばれる管でつながっています。この耳管は、通常は塞がっていて、飲み込んだり、あくびをしたりするときに一瞬だけ開き、耳の中と外の圧力を調整しています。この働きがうまくいかず耳管が開かなかったり、開きすぎたりすると、様々な症状が現れます。
耳管開放症
普段閉じているはずの耳管が、唾液を飲み込まなくても開いた状態になる疾患です。体重減少によって耳管周囲の組織がやせてしまうことや、妊娠、ピルの内服など女性ホルモンの変化、脱水などが原因でおこります。耳管自体は開いているのですが、自覚症状は耳がつまったように感じます。他、自分の声が響いて聴こえたり、自分の呼吸の音が耳に響いたりします。鼻をすすると、一時的に中耳が陰圧になって症状が軽減するため、鼻すすりが癖になる方もいますが、続けると真珠腫性中耳炎になる恐れがあるため、やめるように指導します。
横になって寝たり、頭を下に下げると、耳管周囲が鬱血して少し狭くなるため、耳管が閉じて症状が軽減するのが特徴です。疑わしい場合にはご自身で試してみてください。
治療は、体重減少が原因であれば体重を戻したり、妊娠が原因であれば出産により改善します。漢方薬が有効なこともあります。どうしても治らない時には広がった耳管にピンを入れて、狭くする手術法があります。
耳管狭窄症
正確には、耳管狭窄症という病気はありませんが、副鼻腔炎や咽頭炎により、耳管周囲が腫れて狭くなってしまったり、耳管の入り口の上咽頭に腫瘍ができて閉塞して、耳管機能がうまく働かなくなる状態をさします。耳管が狭窄した状態が続くと、中耳に空気が入らないため陰圧になり、滲出性中耳炎になります。
治療は、原因となる炎症(副鼻腔炎や咽頭炎)や、腫瘍の治療をします。
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